早稲田大学
 早稲田大学所沢校地B地区に現存する湿地は、狭山丘陵において最大規模を有し貴重な動植物が認められる、保全上の重要性が高い自然環境となっている。しかしながら、水田耕作の放棄等の要因にともない乾燥化が年々進み、水生動植物等の減少も見られる。こうした背景を受け、環境・健康・福祉等の分野を対象とした研究機関の建設を所沢校地B地区で進めるに際し、早稲田大学は以下の方針に基づき、湿地の重要性を損なわないための環境管理に取り組んでいくものとする。
  1. これまでの調査・研究により、伝統的な水田耕作が適度に実施されていた1970年代までは、湿地全域が涵養され生物多様性の高い機能が認められていたことから、湿地の維持・管理目標を「湿地全域の涵養再生と湿地との結びつきが顕著な指標動植物の安定的な生息・生育」に置き、効果的な管理方策の検討・実施を行う。
  2. 水路の河床低下に伴う水の集中が乾燥化を促している側面が強いため、かつての水田形態を参考に土堰堤(畦構造)の設置等による水位調節を図り、環境管理の労力的軽減が可能となる仕組みを検討する。
  3. 湿地の維持・管理は、構造的な対応のみでは限界があることや、環境管理作業は環境学習や自然とのふれあいを図る上でも効果的であることから、学内のみならず市民参加による湿地の環境管理の体制づくりに取り組む。この場合、「緑の森博物館」が湿地の周囲を取り巻く形で位置しており、一体的な環境管理が求められることから、埼玉県とも協議を進め総合的な推進体制づくりの実現に努める。

※「平成14年度第1回早稲田大学所沢校地B地区自然環境評価委員会」平成14年5月15日にて策定
 
早稲田大学
 早稲田大学所沢校地B地区は、全域が「県立狭山自然公園」内に位置する、豊かな自然環境に恵まれた地域に立地している。早稲田大学は、今後B地区において環境・健康・福祉等の分野を対象とした研究機関の建設を進めるに際し、自然環境との十分な調和を図るために、以下の方針に基づく「回復緑地」の植栽計画の検討・実施に取り組んでいくものとする。
  1. 造成区域内の建造物建設箇所以外は、極力緑地の復元・再生を図るための「回復緑地」として位置づける。回復緑地は、その位置や機能から「法面植栽」「修景 植栽」「低木植栽」に区分し、植栽内容の検討を行う。
  2. 植栽種の検討に際しては、景観や生態系との調和を図るべき点や管理を可能な限り軽減する観点から園芸種や外来種は除き、周囲の狭山丘陵で普通に見られ、自然環境に馴じんだ在来種・郷土種を用いることを原則とする。また、造成に伴い影響を受ける昆虫の食樹や野鳥の餌となる実のなる木等、開発の影響を低減・代償するための対策との整合にも十分考慮し、植栽内容の検討を図る。
  3. 「修景植栽」や「法面植栽」については、狭山丘陵の樹林地をモデルに、高木・亜高木・低木等の多層構造の緑地とするための植栽手法の検討を行う。また、可能な限り早期に緑地の再生と安定を図るための効果的な植栽手法と、遺伝子汚染を考慮した種苗等の確保、薬剤使用や過度の人為的管理を行わなくてもすむ緑地管理方策等の検討を行う。
 
※「平成14年度第1回早稲田大学所沢校地B地区自然環境評価委員会」平成14年5月15日にて策定
 
早稲田大学
 早稲田大学所沢校地B地区は、狭山丘陵最大規模の湿地が現存することや敷地全域が県立狭山自然公園内に位置する豊かな自然環境に恵まれていることから、これまでに「早稲田大学所沢校地B地区 湿地環境管理方針」および「早稲田大学所沢校地B地区 回復緑地植栽計画方針」が策定され、生物多様性や景観に最大限配慮した校地の建設計画が進められてきた。
 研究棟上部の屋上についても、オオタカ保護対策や周辺の丘陵地景観との調和等の観点から緑化・植栽が取り組まれてきたが、一定期間を経て近年の気象条件等の要因に基づく生育状況の不安定化が顕著な現状がモニタリングにより明らかになっている。そうした背景を踏まえ、これまでに策定されている上記の方針との整合の基に、屋上緑化を改めて推進するうえで留意すべき事項を、以下の屋上緑化・植栽方針としてまとめ、植栽管理計画の検討・実施に取り組んでいくものとする。
  1. 屋上は、人工基盤の上部と言う特殊な立地条件下にあることから、植生の定着と持続的・安定的な生育のためには、対象箇所の土壌・水・光・風等の前提となる環境要素を十分把握し、その環境特性に応じた生育可能な植栽植物の選定を行う。
  2. 植栽種の検討に際しては、周囲の狭山丘陵に自生し景観的にも違和感の生じない在来種・郷土種の中から生育条件の適した植物を用いることを原則とし、昆虫や野鳥等の生物多様性機能の改善にも留意した植栽内容とする。
  3. 植栽内容は、可能な限り多様な植生タイプの成立を目標とする一方で、人為的な管理を最大限に軽減することが望まれることから、これまでの屋上緑化実績を踏まえ、植生の定着・管理が可能と考えられる「草本エリア」と「低木エリア」を設定し、ふさわしい在来植物の選定と望ましい配置を行う。また、気象条件の変化が顕著になりつつある現状等も考慮し、当初段階で必要となる箇所の全てについて再植栽を実施するのではなく、試験植栽を行いモニタリング結果を反映させる順応的・段階的な取り組みとして進めるものとする。
 
※「平成25年度第2回早稲田大学所沢校地B地区自然環境評価委員会」(平成26年3月31日)にて策定